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とあるパロディのボカロニカ

またの名を、永い再演奏のボカロニカ

メモ

・2151年頃の話
山と森に囲まれた、比較的戦争と汚染の影響が薄いそこそこ大きな都市があった。
それでも都市は、国外で長く続く戦争のため、疲弊していた。
都市で流行している娯楽といえば、下級ネクロマンサーが作った粗悪アンデッド同士を戦わせる賭博くらいだった。
都市の北を覆う森の奥に研究所を構える、腕のいいネクロマンサーがいた。
彼はその類稀なネクロマンシー技術で5体のアンデッドを作成した。
彼は5体のアンデッドを連れて都市へ赴く、都市の人々は今までに見たことのない姿形のアンデッドに驚いた。
5体のアンデッドは賭博用の粗悪アンデッドや戦闘用の兵士アンデッドとは比べ物にならないほど、精密で美しく作られていた。
継ぎ目ひとつない体、豊かな表情、会話がたどたどしいことを除けば人間とほとんど変わらない、まさしく一級品のアンデッドを表す”ドール”という言葉を体現したものだった。
だか、見目が優れているだけが5体のアンデッドの特徴ではない。
容姿が優れたアンデッドなどは、娯楽用に作られたセクサロイドのようにそこそこに発展した都市なら少なからず存在する。
ネクロマンサーの合図でアンデッド達は一斉に歌を歌い始める。
疲弊し、夢も希望も気力もなく、ただ世界とともに滅びていくだけの現代において、音楽は過去の遺物と化していた。
多くの楽譜や音声は焼け、楽器は武器へと替えられた。遠くで聞こえる戦火の轟と汚染されつつある山や森のざわめきだけが、都市の人々に与えられる音楽だった。
かつてネクロマンサーはただ滅びに身を任せるだけの都市の人々に嫌気がさし、森に研究所を構え、人々の諦観を掃えるような存在を作ることを目標に研究を続けていた。
探査用アンデッドを作成し、外に放ち、世界中から集められるだけの楽譜や音声記録を集めた。
それらをデータに起こし、このために作成したとっておきのアンデッドに組み込んだ。
娯楽用アンデッド。歌唱に特化した半機械のドール”ボーカロイド”が完成した。
長い間無気力に生きることしかなかった都市の人々は、音楽をよりどころに心の平穏と、ボーカロイドを構い愛でることでつかの間の安寧を手にした。
ボーカロイドを生きる理由にして、作り上げた幸せな時間は決して長くことは続かなかった。
最終戦争は、すぐそこにまで迫っていた。

・2153年頃の話
比較的戦火から遠く穏やかだった都市にも、戦争の火種は近付いていた。
「徴兵」の流行にあたり、国民の総アンデッド化を進める方針を、都市を抱える国は取ることにした。
ある日、大量のアンデッド兵士が山を越え、都市へと流れ込んできた。
アンデッド兵士たちは、都市の人間を捕まえては山の向こうへと連れて行った。抵抗すれば容赦なく殺された。死体もアンデッド兵士は山の向こうへと連れて行った。
ネクロマンサーは森の研究所の最奥。隠し部屋の中で、5体のボーカロイドに低温処理し休眠状態にして隠した。
そして念入りに念入りに通路を塞ぎ、高度な解析技術を用いなければ見つけられない程の偽装を隠し扉に施した。
量産型の簡易アンデッド兵士では到底見つけることができないだろう。
しかし、ここが時間切れだった。
ネクロマンサーは研究所にまで押し入ってきたアンデッド兵士につかまり連れて行かれた。
それから、永い永い時が経つ。

・21??年頃の話
最終戦争が終わり、核の冬を迎え、核の冬がおわり、ネクロマンサー同士の代理アンデッド兵士による干渉合戦も小康状態となったころ。
あのネクロマンサーは存在していた。
徴兵のために国に連れ去られた彼は、その高度なネクロマンシー技術を買われ、より高度で強力な戦争用アンデッドを作ることを命じられた。
しかし彼は、人の助けになるアンデッドを作る以外にこの技術は使わない、と拒絶したために殺されてしまった。
その後、アンデッドとして無理やり蘇らさせられた彼は、条件付けを施され、生前のネクロマンシー技術を余すことなく活用し戦争用アンデッドを作り続けていた。
最終戦争途中で国が滅亡しても、期限のない条件付けに縛られた彼は戦争用アンデッドを作り続けた。幸い材料ならいくらでもそのあたりに転がっていた。
信念であった人助けのためのアンデッド研究を取り上げられ、条件づけのため自死することもできず、途方もない間、戦争用アンデッド制作を強いられたネクロマンサーは少しずつ狂って行った。

・22??年頃の話
ある日、ネクロマンサーは思い出した。かつて故郷で作成したとっておきの”ドール”達の存在を。
そして、ネクロマンサーは敵地探査用のアンデッドを故郷へ向かわせた。
すでに廃墟と化した都市を抜け、すべての木々が焼け落ちた森だった場所に、いつかの自身の研究所が残っていた。
大半の機械類は使い物にならなくなっていたが、隠し部屋の偽装はそのまま残っていた。
高度な技術を搭載した探査用アンデッドはいくつもの仕掛けを解き、隠し部屋の中へと入っていく。
そこにはボーカロイド達がかつての姿のまま眠っていた。
ネクロマンサーは狂った頭の片隅で考えた。
この子たちは戦闘用に作ってはいない。このまま外に出してはすぐにそこらのアンデッドに壊されてしまうだろう。
それに、この世界の惨状を目の当たりにしては、すぐに人間の心の部分が壊れてしまうだろう。
ならば、今の世界に適応したモノに作り変えてしまおう。
肌を丈夫に、骨を補強し、武器の扱いを刷り込み、体の使い方を組み込んだ。
人の心は朧げにし、かつて記憶に封をして、機械の意識を表面に押し上げた。
まだまだ使える隠し部屋の機器を駆使して、遠隔操作で探査用アンデッドを介してネクロマンシー技術を発揮した。
そして完成した5体の”ドール”。目覚めるにはまだ時間がかかりそうだ。
この子たちなら、きっと自分のところまでたどり着いてくれるだろう。そして自分を完膚なまでに壊しつくしてくれるはずだ。
最高の作品達の手にかかる夢に恍惚感を抱きながら、ネクロマンサーの意識はまたひとつ狂気に塗りつぶされていった。
また、いつもの作業が始まった。強く、合理的に破壊の限りを尽くす戦争用アンデッドを作っては、野に放つ日々が始まった。

そして、”ドール”たちが目覚めるときがやってきた。




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●定規とペンのキャップがよく行方不明になります。

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